部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

「全国部活指導者マップ」を開設しました

■「全国部活指導者マップ」を開設しました

https://bukatsu-japan.at-japannet.jp/

 

ここまでの歩み

 

2015年に部活の未来に危機感をじわじわ感じ、クラウドファンディングで協会を設立しました。部活動制度には、様々な問題が内包していることは明らかでした。それに対して、問題提起をするだけでなく、具体的に制度を作る活動をすべきだろうというのが、我々の出した答えでした。

 

まずは、指導者の質を高めることを目指し、部活動指導者及び関係者を集めて研修会を始めました。受講者を集めるのには、本当に苦労をしました。講師の方との交渉から始まり、会場を押さえたものの、人が集まらないという事態は日常茶飯事でした。

 

運営は赤字続きで、マンパワーは、支援をしてくれる友人が頼りだったのですが、部活動を何とか健全なかたちで活性化したいという気持ちは共通していたので、快く力を貸してくれて有難かったです。

 

しかし、いくら正しい目的の活動をしていても、鳴かず飛ばずでは長続きはしません。スタッフで話し合い、結論としては、指導者の質を高めるためには、「育成」という局面に加えて、「選抜」の局面も必要ではないかという考えのもと、2020年から検定試験の実施を始め、部活動指導者のための教本も作りました。

 

そして、検定試験は一定の反響があり、受験者は徐々に増えてきました。しかし、登録した人材の活用の道筋が見つからず、行政に手紙を出したり、PRをしても反応がなく、極少ない予算のなかで何が出来るのか思案した結果、全国をカバーする仕様で、利用しやすいシステムを作ってアピールしようと考えに至りました。

 

ご承知のように日本スポーツ協会のサイトにマッチングシステムはあるのですが、我々のサイトとの一番の違いは、競技のための専門性に加え、これまで学校教育のなかで果たしてきた部活動の役割についての理解を深めるための部活動指導員検定制度が、この「全国部活指導者マップ」システムのベースになっているという点です。

 

これからも具体的に行動していきます。

よろしくお願いいたします。

 

■「全国部活指導者マップ」概要

・部活指導を希望する側は、検定試験を受けて合格すると指導者マップの名簿に登録され「指導者会員」になります。登録だけなら無料で登録が可能ですが、優先順位は有資格者にあります。
・指導者を探す側は、「閲覧会員」として登録が必要です。「閲覧会員」には当協会の賛助会員になり、年会費を払う必要があります。

マッチング手順
1、「閲覧会員」は、検索システムや地図から、条件に合う地域や指導種目で指導者を検索する。
2、条件に合った「指導者会員」にオファーを指定フォームから送り、交渉開始する。
3、「閲覧会員」から連絡があった場合、承諾されるか否かについては、「指導者会員」各々の判断になるので、依頼元の団体から提示される採用条件などを十分検討して結論を出す。


該当指導者と部活動指導についての交渉は、個別に進めるかたちなので、現状では、協会は関りを持たないスタンスです。将来的に評価制度を導入して、追跡評価制度を導入をと考えています。

 

www.asahi.com

部活動指導者が成長する全国的な仕組みが欠けている

ドイツ人サッカー指導者ゲルト・エンゲルス氏に学ぶ
◆私ごとですが、私は40代で教員を辞め、オーストラリアの大学でテニスコーチをすることになり、その時から考えが180度変わりました。

生涯に渡ってスポーツを楽しめるようにするためにどうすればいいのか、学ぶ喜び、達成の喜び、仲間のいる喜びをスポーツを通じて、長期的な視野で伝えなければと思いました。

そのためには、日本のスポーツ指導者の意識を変える仕組みを作らなければという思いが、この協会設立のもとになっています。

先日、ゲルト・エンゲルス氏の「日本サッカー育成論」のなかで、『「1人ひとりをもっと大事にする」指導を実現すれば、より多くの才能が芽を出す』との記述を読み、深い共鳴を得ました。
https://the-ans.jp/column/331282/

◆そもそも、現状の日本のスポーツ界にある理不尽な強制と押し付けが、どう引き継がれてきたのか、その大もとはというと、太平洋戦争が終わって、日本に新しい教育が始まった頃に遡ります。その頃、国民は部活動を通して目新しいスポーツに触れることになるのですが、指導者の位置付けや、指導方法などの経験もなく、曖昧な体制からの始動だったので、戦前の経験が引き継がれます。

つまり、軍事教練的な上意下達や一方的な命令の指導法が部活動に根付いてしまったのだと言われています。そこまでの教え方として、軍隊への教育しか知識がなかったので、そこから始まって今だに引きずっているわけです。

はやり、日本の場合、理論的に分かるということによって上達するという考え方が多くのスポーツ指導者に希薄で、もともとの運動センスと膨大な運動量のみがパフォーマンスを作ると信じられているという傾向は根強くある気がします。

だから、中学までに結果を出した選手を強豪校に集め、あとはひたすら何も考えさせずに長時間練習に打ち込ませるパターンに落とし込み、学校の名声にあげて、自分のキャリアアップに繋げるかたちが、多くの日本選手のプロまでの経歴になっています。

◆日本人の練習量は世界一です。オリンピックや世界選手権で盛り上がって、たくさんメダルも獲得してますが、人口比でみると世界のなかの実際の立ち位置が見えてきたりします。実際、指導者の指導法のレベルはまだまだです。

独裁的な指導がなくならない限り、この状態は続くでしょう。指導者育成の仕組み、つまり、部活動指導者をガバナンスする全国的な仕組みが欠けていることが事態改善をための最も大きなネックになっていると考えます。

いまだに指導者は、好き勝手にそれぞれが職人技で指導する方式が中心にあり、、組織的に成長する体制になっていないから、科学的な指導、公平性のある取り組みに欠けて、指導者は自己流でやった者勝ちの状態になってしまっています。

◆大事なことは、育てようという気持ちなのだと思います。下手な生徒は下手なまま、上手い生徒を競争原理に乗せて絞り上げる仕組みのもと、スポンサーのために、学校のために、その結果を利益に結びつけることが目的になりがちです。

組織にとって成果と成長は両輪であり、成果は必要ですが、ある特定の部分について、現状、その成長の仕組みを放棄している体制があることが残念でならないです。日本全体を考えると、大事な未来を一部の企業や学校の宣伝のために、みすみす無駄にしてしまっている気もします。

今、中体連と高体連は、各学校や生徒からの会費と行政の補助金で運営されていますが、大会運営以外に手を回す余裕がありません。ですので、それと同等の部活動指導者の全国規模の組織が実現し、指導者の派遣、教育などを含めた部活動の運営などが出来る新制度の構築を願っているところです。

 

部活動指導者をお探しの教育委員会担当者の方へ

登録指導者については、学校や教育委員会などからの依頼があった場合、登録情報の提供など、担当校が決まるまでの手続きをサポートとさせていただきます。
なお、部活動指導員検定の合格者には優先的にご連絡を差し上げおります。

 

以下、依頼フォームです。

部活動指導員紹介依頼フォーム – 一般社団法人 日本部活指導研究協会 (bukatsu-japan.com)

 

 

部活動指導者が学校現場で指導の機会が得られるための情報提供について

登録指導者の学校現場へのご紹介のお知らせ
2023年4月から部活動の地域移行政策が動き始め、部活動の外部指導者の必要性が、今まで以上に高まっています。

当協会としては、今後も登録指導者の方々と学校現場の橋渡しのサポートを行って参ります。

部活動指導者としてのご紹介のパターンは、以下のパターンがあります。ご承知おき下さい。
1、国や自治体、中央競技団体から依頼があった場合。
2、国や自治体、中央競技団体から委託を受けた企業から依頼があった場合。
3、私立学校や民間団体、学校関係者から依頼があった場合。

何れの場合も、依頼元と登録情報を共有のうえ、条件に合った指導者の方にご連絡を差し上げるかたちになります。

依頼の連絡があった場合、承諾されるか否かについては、各々の判断になりますので、依頼元の団体から提示される採用条件などを十分検討のうえご判断下さい。

協会としては、出来るだけ多くの優秀な登録指導者の方々が、部活動指導の機会に恵まれますよう対応致します。

ご不明なことや採用について心配なことなどありましたら、協会の相談窓口までご相談ください。
info@bukatsu-japan.com

 

部活動指導員検定について

bukatsu-japan.com

 

朝日新聞:暴言繰り返すコーチ「力関係は顧問の上」 部活指導者の体罰どう防ぐ

2023.0319朝日新聞

3月19日朝日新聞朝刊の社会面に本協会代表中屋のインタビュ記事が掲載されました。
・暴言繰り返すコーチ「力関係は顧問の上」 部活指導者の体罰どう防ぐ
https://www.asahi.com/articles/ASR3K64Z8R27UTIL00B.html
(朝日新聞)

体罰暴力は、安易な指導法の選択の結果で、これは体罰暴力以外の効果的な指導法を指導者が知ることで解決するはずという主旨の話をしています。

高圧的な指導をしてきた方々の話を聞くと、その手法を選んだ明確な理由はなく、単に反射的にとか、「そういうものだと思っていた」とか、科学的な根拠はなく、生徒に対し高圧的な対応をして来た方がほとんどで、「勝たせたい!」という思いを感情に任せて指導してきたというのが、実態のようです。

その背景には、勤務評価など自身のキャリアアップを意識してなどの要素も少なからずあると思いますが、多くの方は、生徒思いで、指導面で真面目であるにも拘わらず、なぜか暴言や体罰を指導の手法として選んでしまったという感じがします。

やはり、「高圧的な指導」より、「生徒を理解する指導」の方が効果があるという現実を「実感として知る」ことがポイントになるのではと考えています。つまり、恫喝、制裁、強制で伝える方法以外で、厳しさを伝える術を知らないことが大きな問題で、更に恫喝、制裁、強制を否定する各種の通達への理解がどうしても「建前の域」を脱しきれないところに問題があるのではと考えています。

この問題の解決するためには、今まで指導者として常識と思われてきたことの否定を含め、いかに体罰暴力による指導が、無益で非効率な方法かを現場レベルの実践報告やデータを提示して、認識を新たにしてもらう啓蒙を施していくしかないと思っています。そして、指導者も、生徒も、共に目的を達成できる指導法を学ぶ機会を増やすことが、部活指導者の体罰を防ぐ唯一の方法と確信しています。

基本的に部活研の研修会には「知ることによって、人は変わる」というコンセプトがベースにあります。これからも部活動指導者の方々の成長を後押しできるような研修会を企画していきます。ご参加を心よりお待ちしております。

更新研修以外でポイントを取得するには

当協会主催の更新研修以外でポイントを取得するには
■レポート提出でポイントを取得
指定の更新研修を受講出来なかった方は、レポート審査によって、研修ポイントを取得することが出来ます。レポート審査の申請をせずに更新期限が過ぎた場合は、登録が抹消されますのでご注意下さい。
以下の要領に従ってお申込み下さい。
1.レポート課題(研修会記録動画の視聴、部活動関連書籍の読書、指導実践報告)
2.レポート1件(800字以上)につき1ポイントの付与になります。
3.協会ホームページ内の所定の申込フォームよりレポート審査の申請後、審査料(4,500円)を納入して申込み完了になります。
4.申込み受付完了後、2月申し込みは3月末まで、8月申し込みは9月末までにレポート提出をして下さい。(レポート提出までの間は、資格保留期間になります。)
5、レポート審査等の指示は、2月中、8月中に送ります。

日本部活動学会第5回研究集会「主権者教育と部活動の関係を探る」ダイジェスト

昨年12月10日に山梨英和高校にて、日本部活動学会第5回研究集会が開催されました。
担当理事として参加しましたので、以下、シンポジウムの内容の一部を抜粋しダイジェストとして、ご紹介します。

◆堀江実行委員長より
自治シチズンシップを地域部活動にどう根付かせるのかについて、議論を深めたいと思う。

日本教育実践研究所 長沼豊代表より基調報告
シチズンシップ教育とは、参加型民主主義社会を支える市民を育てる教育である。
・部活動に関わる生徒、教師、学校、地域の4者の視点から部活動改革マップを作成した。
・「社会的道徳的責任」、「社会参画」、「政治的リテラシイー」、「アイデンティティと多様性」の4つの要素を念頭にシティズンシップ教育から見た部活動について考えた。
・地域部活動の実践への示唆としては、「市民性を作る」、「生徒主体で考える」、「特別活動の知見を生かす」を考えている。
・部活動の地域移行について、そのまま移行できないということ、地域移行ではなく地域展開であるということ、各主体間の関係の熟議が必要であるということがポイント。
・地域移行は、部活動の無駄なところをそぎ落とすチャンスでもある。
・本来、部活動はどうあるべきかを考え、未来を描く視点が必要。
・部活動には生徒のシティズンシップを育む機会が多く内在していると同時に、それを阻む機会もたくさんある。

◆シンポジウム

**<<パネラー>>********************
長沼 豊(日本教育実践研究所)
林 直哉 (長野県松本深志高等学校 教諭)
平野和弘(駿河台大学/一般社団法人Moonlight Project)
齊藤 勇(NPO 法人日本地域部活動文化部推進本部)
***************************************
長沼:政治リテラシー、特にお金の問題との向き合い方について、どう考えるか。
平野:お金を通じて人との関わり方を学ぶことが大切。
:予算を考えない自治はありえない。活動を予算という言葉に変換して話し合ってはどうか。
斉藤:主体者である自覚をもって予算を使うということがポイント。

長沼:お金の管理、決め方。透明性を担保することは大切だが、問題が起きた時に、どう対処するか生徒自身に考えさせることも大切と考えている。
平野:実際は、基金など大きなお金がある実態はある。
:お金が足りなくなった事件があり、連絡のやりとりを追跡して徹底的に調べた。教員のミスについては、率直に生徒に謝罪をした。決着のつけ方まで教育だと考える。

長沼:部活動は前提として、主体性や自発性から始まることを考えると主権者教育は余計に必要ではないか。
平野:教師側からは、部活動を活用できれば、自治の力を育てる点を考えると、やりやすい活動形態と考える。
:基本的に、部活動と正課をひっくり返せばいいと考えている。民主教育の原点が部活動にあると思っている。シチズンシップ教育は、本来、生課でやるべきでは。
斉藤:自分たちでやったということが大事。シチズンシップ教育は、総合的な時間と親和性が高いと思う。

長沼シチズンシップ教育を同じ課題で、学校でも地域でも、生徒が主体になって運営するかたちを目指すべき。外部の指導員にはハードルが高いかも知れないが、教員がどうバトンを作るかが課題。
平野:地域移行によって、生徒主体という視点を持たない指導者も出てくる。可視化、共有、参加が大事。地域に移行しても、自治は教師が教えるしかない。部活通信を作るとか。教師しかできないことを働きかけることはできる。
:教員の数を増やすことに尽きる。それでできるだけ対応する。
斉藤:新しい価値を見出すという方向性で取り組むしかない。そして、自分たちで決める妥当性を決める基準はどう考えるのか
:見ざる手があって、自分たちでやったと思わせることも大切。不完全を許さないと自治活動は前に進まない。深い関係性があったとき、強く指導するときもある、ハラスメントも問題で壁になっている。