部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

教員の過重労働問題が浮上してきたもう1つの背景

 この部活動の問題が浮かび上がって来た背景についてですが、1つは、名古屋大学の内田先生が発信した「ブラック部活」のネーミングのインパクトのおかげで部活中事故の発生件数の再認識がなされ、問題意識が喚起されたということは大きいと思います。
 それに加えて過重労働の問題についてですが、大方の公立学校はそうだとおもうのですが、実はいわゆる長期休業中の勤務形態の変化も大きいと思っています。

 つまり、以前は学校の先生は夏休みは自宅研修ということでほぼ出勤はしないで済んでいた訳で、それが通常通りの出勤が義務付けられ、夏休み、冬休み、春休みも毎日出勤するかたちになりました。

 それで自宅研修が認められていた時代は、学期中にどんなに朝早くから夜遅くまで働いても、夏休みがあると思えばそれも我慢できていたわけです。

 10年くらい前でしょうか、夏休みに出勤しないというかたちについて世間の理解が得られないということで、その対策として講じられた長期休業中の自宅研修への大幅な規制が、実は教員の過重労働の声の裏に大きく働いている現実も、この問題を考えるに当たり考慮すべき大きな要素の一つだと思います。

 かと言って元に戻す必要もないと思いますが、そういう過重労働への不満に対する緩衝材が昔はあったというこの認識は必要ではと思っています。
 なので急に仕事が増えた訳でもなく、今の教員が我慢が足りないというわけでもなく、その辺の事情に対する認識もあると本質が見えてくる気がします。

 

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最終的に生き残った者しか調べないことで統計的なバイアス が出てしまう現象

  今回、部活動学会の大会で、気になったキーワードに「生存バイアス」という言葉が
ありました。

 「生存バイアス」とは、最終的に生き残った者しか調べないことで統計的なバイアス
が出てしまう現象のことです。

 個人の成功体験にもとづいたデータのみを集計すると同じ体験をして脱落していった
人たちの傾向を見落としてしまう可能性があります。

 私も部活動の経験が今の自分のやっていることにプラス材料として機能していると思
っています。恐らく私みたいな人は世の中に大勢いるでしょう。
 しかし、だからと言って、その体験を部活動の存在意義の根拠にして安易に主張してしまうのではなく、同じ体験が人によっては違う結果になり得るということへの配慮もあってしかるべきです。

 なぜなら、この成功体験は部活動の経験がうまい具合に働いて生き残った人の主張で
、実はこの裏に不快な思い出に今でも苦しんいる方がいる半面もあるわけで、ここは忘
れててはいけない点だからです。

 例えば、盆正月なく毎日休まず部活動をさせられて、時には暴力、暴言を受けたりし
たけれど、あの厳しい部活動を乗り越えられて自分の強い心が育まれた、あの時のこと
を思えば何でも出来る、みたいな成功体験は、多くの部分に生存バイアスがかかった意
見で、正反対の受け取り方をして心に傷を負っている方の存在も認識すべきで、この辺
をおさえたうえで部活動のあり方は判断をすべきなのだろうと思います。

 ですから、常にバイアスの存在を意識し、目立つ成功例以外に対しても広く目を向け
ていくことが、この部活動改革を進めるうえでは必要なのだろうと思います。

 それでも部活動へのノスタルジックが根強く日本人の心にあることは厳然たる事実で
乱暴にそこを封印してしまうことは現実問題としていい解決策に繋がらないとも思い
ます。

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3月25日日本部活動学会第1回大会 史上最大の部活会議が盛会のうちに無事を幕を閉じました!

3月25日の日本部活動学会の第1回大会が大盛況のなか幕を閉じました。
まさに史上最大の部活会議だったと思います。

日本の部活動研究の第1人者が勢ぞろいの大会でした。
大会中、最新のデータ、深遠な見識、造詣深い発言等々に満ち溢れていました。

個人的な感想として、
現在の部活動の状態は、言わば生活習慣病におかされた中高年の身体のように思えました。
何も考えずに飲み放題、食べ放題で生活して来て、見た目は普通に生活してる様に見えても、
実は高血圧、糖尿病、痛風、あらゆる成人病におかされ、明日倒れても不思議ではない、部活動もそんな危機的な状況では、、

今回の大会では部活動の一流専門家の皆さんが、有効な処方箋をたくさん示してくれました。
健康を取り戻すための薬が劇薬であれば副作用が心配です。かといって食事療法だけでよいのか、様々な意見がでました。

今後の方針として、引退すべきだという意見、仕事を減らして身の丈に合った生活をすべきという意見、それから、いやいやまだまだ今まで通りやっていけるという意見。
これも様々でした。果たして部活動制度の健全化への道はいかに、、

学習大学の大教室は最後列まで熱気むんむんでした。

 

次号以降、詳しくお伝えします。

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日本部活指導研究協会の代表として、閉会セレモニーで挨拶させて頂きました。

 

 

部活顧問間の横の繋がりの薄さが孤立を生んでいる

 よく考えると部活顧問は、同じ競技内でもそうですが、各種競技を跨いで顧問が集まる機会というのは全国的にない気がします。

 当然ですが、全員顧問制の学校で顧問を集めるイコール職員会議になってしまいますし、かといって各部活の代表が集まるという顧問会議なるものは恐らくどこの学校でもないのでは、、

 例えば校内で各部活から代表顧問が集まるとなると、何となく部活熱心派の集会の様相を呈してしまう可能性もあり、校内融和の観点からは望ましくないといった見えない空気もあります。

 学校内ですらそんな状況なので学校間で、あるいは各競技種目間でとなると顧問が集まって意見交換をするチャンスはなかなか難しいと言えます。

 こうなると部活動の問題については1人で悩まざるを得ないのが現実です。実際、身近な校内でも顧問間の横の繋がりがかなり薄く、特に新人の先生などは孤立してしまいがちになります。

 例えば経験のない競技の部活動の顧問になったとして、その場合、技術のことはもちろんですが、練習試合を組むネットワークなどがあるわけもなく、暗闇のなかでさ迷うような気分を延々と味わうことになるのです。

 教科指導には、目安になる指導要領があります。部活指導にはそれに当たるものがほぼありません。にも拘わらず部活顧問を支える組織が存在しないというのが実態です。

 まずは部活を指導する顧問と外部の指導員を各学校毎に組織化し、年に1度でいいから集まるところから始めてはどうでしょう。そうすれば、各校がその組織化した連絡会議で校内の部活関係者を一堂に集め、各種連絡、注意喚起が出来ます。
 結果的にとりあえず外部の指導員に一対一で個別に対応するという煩わしい事態は解消される気がするとおもうのですが、、
 そして、横の繋がりのきっかけにもなり、情報交換の貴重な場になりうるのではないかと考えます。

 

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そもそも制度のなかで部活が曖昧な位置づけなった歴史について

こんにちは部活指導研究協会通信です。

 としまコミュニティ大学講座「部活顧問の過重負担問題を考える」の報告です。

題して~部活の曖昧な位置づけの歴史~


 日本部活動学会の代表の長沼豊先生の講演会に参加してきました。たくさんの受講者の方がいらしていて、世間の関心の高さを感じました。そんななか、一筋縄ではいかない問題を一緒に考えてきました。


 今までに部活の歴史について書籍、講演等に数々触れてきましたが、今回は長沼先生に部活の歴史を丁寧に解説して頂き、改めて思うことがありました。


 それは昭和44年の必修クラブが登場して、平成元年の学習指導要領でその必修クラブを部活動で代替措置が出来ると規定された辺りのところです。


 つまりこの時に部活動に参加すれば必修クラブを履修したものとみなすと指導要領で規定されたわけですが、このことが後々に余計に部活の存在を曖昧にしてしまった措置だったようなのです。


 なぜなら、教育課程にしっかり定義された必修クラブと、参加してもしなくてもよい教育課程上は実態が明確でない部活を同じ扱いで処理をしたため、現場の先生方の間では必修クラブと部活動の扱いに混乱が生じさせてしまったことは事実です。


 この後、平成10年に中高の必修クラブ活動は廃止になるのですが、残ったのは何だかわからないけどやらなければいけない気がする部活動が残って、現在の学習指導要領のなかで曖昧な存在感のままここまできているということです。


 この部活動の学校教育の歴史のなかの位置づけの変化でも、特に昭和44年の改訂は今の部活の状態に大きな影を落としてしまったと言えます。


 今回の長沼先生の講演会では、この辺の理解が深まったことが大きな収穫でした。

杉並区中学校の保護者会等予算型 民間委託モデル

こんにちは、日本部活指導研究協会通信です。


 現在、部活動の指導は学校の先生だけが顧問というかたちで任されるのではなく、外
部指導員というかたちで学校外の指導者も指導に携わるというかたちがある程度定着し
ています。


 教員の部活に関わる時間が労務管理上の位置づけが問題になるなか、教員の過剰労働
の問題と相まって、部活の指導を教員の仕事から切り離そうという動きがあります。そ
の動きの延長に外部指導員の導入が行われています。
 部活を教員の仕事から切り離した場合に考えられる問題は3つです。
1、部活の教育効果を捨てきれない
2、教員が抜けた後の指導者の人材確保の問題
3、教員の代わりに担当する指導者の報酬確保の問題


 部活指導をしたいがために教員になった先生もおられるほど、部活は学校教育に深く
根差した活動になってしまっています。それと財源の問題、人材確保の問題はなかなか
ハードルの高い問題です。


 ですから、そうそう簡単に地域のスポーツクラブや外部指導員に全てをお任せること
にいかないのが現状なのです。


 先日、部活コーチング派遣事業で全国で実績を上げているスポーツデータバンク株式
会社様を訪問する機会を得て、スタッフの方の意見を伺ってきました。


 スポーツデータバンク株式会社様は、杉並区教育委員会と提携して杉並区内の中学校
の部活に指導者を紹介する活動について時間を掛けて関わってこられたとのことです。


 興味深いのは保護者会等予算型の民間委託モデルというかたちで部活動支援体制を確
立されたというところです。


 プロコーチが公立の学校や公立の運動施設に積極的に関われない大きなネックは何か
。それは公共施設で営業行為が禁止されているということがあるからです。


 この公共施設をプロコーチが利用することについて規制する規則自体は今まで違和感
なく受け入れて来たのですが、よく考えると社会体育の普及の観点から考えるとどうも
合理的でないように思えます。


 杉並区の中学校の問題に戻りましょう。区立中学校の場合も、先ほどの例と同様の言
い方をすれば公立の学校内で営業行為は出来ないということになってしまうわけです。
 杉並区の場合は、先にも触れた保護者会等予算型と言って、予算の出どころは教育委
員会や保護者会からです。大きいのは保護者会が費用を集めて運営に関わったというと
ころでしょう。


 税金を動かすにはそれなりの手続きを踏む必要があり、その場に応じた対応には不向
きな面が障害になってしまうのですが、保護者から集めた私費を活用すれば柔軟な対応
が可能になります。


 私の考えでは、指導者の報酬について税金で賄うというのではなく、現在、中体連、
高体連が生徒会費などの私費を活用して大会運営を行っているのだから、部活指導者の
報酬も何らかのかたちで生徒会費と同様なかたちで徴収した私費を活用できればよいの
ではと思っています。


 スポーツ庁の方針では、今後、民間企業の取り組みと積極的に連携していくようです
。きちんと指導者としてのトレーニングを受けた指導者が各部活動に関われるような仕
組みになれば良いのですが。


 スポーツデータバンク株式会社のような取り組みが今後、市民権を得て大いに活用さ
れる時代になるかも知れません。
 

 

昨年末創設されたこの日本部活動学会が第1回大会 開催します。

日本部活動研究協会は、第1回大会を後援することになりました。

部活問題への発言がメディアで注目されている名古屋大学の内田氏の講演を予定しています。

その他、各方面の専門家をお招きして部活動の未来像を共有したいと思います。奮って参加下さい。
●大会テーマ
「部活動のこれまでとこれから」
●日時
 2018年3月25日(日)10時~17時15分
●場所
 学習院大学 西5号館202教室(※JR山手線「目白駅」徒歩5分)
申し込みは下記まで
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/506989/

 

日本のスポーツは部活によって支えられています。
各方面の専門家が集結し部活動の未来像を共有します。

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