部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

最終的に生き残った者しか調べないことで統計的なバイアス が出てしまう現象

  今回、部活動学会の大会で、気になったキーワードに「生存バイアス」という言葉が
ありました。

 「生存バイアス」とは、最終的に生き残った者しか調べないことで統計的なバイアス
が出てしまう現象のことです。

 個人の成功体験にもとづいたデータのみを集計すると同じ体験をして脱落していった
人たちの傾向を見落としてしまう可能性があります。

 私も部活動の経験が今の自分のやっていることにプラス材料として機能していると思
っています。恐らく私みたいな人は世の中に大勢いるでしょう。
 しかし、だからと言って、その体験を部活動の存在意義の根拠にして安易に主張してしまうのではなく、同じ体験が人によっては違う結果になり得るということへの配慮もあってしかるべきです。

 なぜなら、この成功体験は部活動の経験がうまい具合に働いて生き残った人の主張で
、実はこの裏に不快な思い出に今でも苦しんいる方がいる半面もあるわけで、ここは忘
れててはいけない点だからです。

 例えば、盆正月なく毎日休まず部活動をさせられて、時には暴力、暴言を受けたりし
たけれど、あの厳しい部活動を乗り越えられて自分の強い心が育まれた、あの時のこと
を思えば何でも出来る、みたいな成功体験は、多くの部分に生存バイアスがかかった意
見で、正反対の受け取り方をして心に傷を負っている方の存在も認識すべきで、この辺
をおさえたうえで部活動のあり方は判断をすべきなのだろうと思います。

 ですから、常にバイアスの存在を意識し、目立つ成功例以外に対しても広く目を向け
ていくことが、この部活動改革を進めるうえでは必要なのだろうと思います。

 それでも部活動へのノスタルジックが根強く日本人の心にあることは厳然たる事実で
乱暴にそこを封印してしまうことは現実問題としていい解決策に繋がらないとも思い
ます。

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