部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

リスクマネージメント講習、部活動中の賠償責任と違法性の阻却について

リスクマネージメント講習「違法性の阻却」について
2月8日、板橋区の総合型地域スポーツクラブの志村スポーツクラブ「プリムラ」主催のリスクマネージメント講習会に参加して来ました。


講師は、実践女子大学短期大学部 名誉教授の日野一男先生でした。日野先生は、スポーツ法学会の役員を務められた経歴もあり、学識経験者として学校事故弁護団に関わる等、実際に多くの学校事故の問題と向き合って来られた方です。

 

この講習を受けることでリスクマネージメントについて意識を新たにすることが出来ました。日野先生の話は具体的な事例を豊富に盛り込みながら、難しい法的解釈を論理的に明確に説明しておられ、たいへん勉強になりました。

 

特に印象に残った箇所について、ここでレポートします。
さて、「違法性の阻却」という言葉をご存知でしょうか。これは損害賠償責任について議論をするなかで、使われる用語のようです。賠償責任を問われるような行為について、その違法性を否定することを「違法性の阻却」といいます。

 

部活動の指導者として、日頃から違法性の阻却をするに足る事由を持ち合わせて、指導に当たっているかは、再確認が必要です。

 

例えば、練習中に剣道のツキが相手の喉を突いてしまい、大怪我を負わせてしまった場合その責任はどこまで負わなければならないのか。

 

日野先生は、こう説明しています。そのスポーツをするために予測できる危険、内在する危険の域を越えているかがどうが問題だと。

 

つまり、剣道で相手と対戦する時にツキは、一つの技であり、その技を使った結果、相手に怪我を負わせた場合、加害者は刑事上も民事上も責任を負う事象とは認められない。これが違法性の阻却に当たるわけです。

 

どういうことかとうと、その行為をその都度罰していたら、そもそもそのスポーツが成立しなくなってしまうといことです。言い換えれば、その事を双方承知のうえでそのスポーツを行っているという解釈です。内在する危険性の域を越えないということが違法性を否定する事由になります。

 

ただ、ここで大事なのは、段階を追ってルールに則って安全確保を行ったという大前提を忘れてはならないのです。指導者はここを確実に押さえておかないと違法性の阻却をすることが出来ないということになります。

 

この行為に至るまで、段階を追わず、ルールを逸脱し、安全確保がなされていない場合は、内在する危険の域を越えてしまっていると判断され、加害者、もしくは指導者も損害賠償責任を負うことになります。

 

指導者として、安全確保の意識は日々常に油断なく行われなければならないのですが、そのことが、まさしく違法性の阻却に繋がるのです。スポーツをするうえで危険と隣り合わせでいること自体は避けられない現実があります。しかし、その危険に対してその時々に応じて備えているかどうか、そこは再確認する必要があるでしょう。

 

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