部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

長沼科研第3回公開研究会に参加して

7月25日(日)にZOOM会議にて 「持続可能な部活動のあり方を考える2 ~研究と実践の今までとこれから~」というテーマで公開研究会が開催されました。

本研究会は、学習院大学の長沼先生を中心に行われている研究活動で、2年間に渡る研究の成果を発表する第3回目の会です。
以下、印象に残った報告を取り上げます。

冒頭、長沼先生の挨拶で、今後の部活動のあり方を探るために、17校の部活動の実地調査をしてきたことと、それに対する総合的な分析と考察をする段階にあるとの報告がありました。

訪問17校の階層別クラスターポイントによる分析(明治大学 林幸克教授)
訪問校でのインタビュー調査から見えた持続可能な部活動を実現するためのポイントを整理
1,技術的指導者の確保・配置
・教員の異動や人材に左右されない体制を確保をする必要がある。
・安全性の確保のため。
・生徒の興味、関心に応え、モチベーションを維持する。
2,教育課程との関連の明確化
・曖昧な制度設計の建付けを改善する。
・教員の負担を明確化する。
・保護者への理解を深める。
3,生徒にとっての部活動の最適化
・卒業後も含め部活動に対して継続的な関りが持てる体制を確立。
・主体性を育むという教育的な意義を持たせる。
・外部指導員の利用などで指導の効率化を図る。


現行小学校のクラブ活動のかたちに部活動改革の大きなヒントがあると長沼先生の紹介から、小学校のクラブ活動の報告。
■八王子市立浅川小学校の清水弘美校長より
小学校の特別活動の一環にクラブ活動がある。このクラブ活動の経験を得て、子供が中学校で、例え不登校でも部活動だけは参加するという学校との繋がりを維持する大きな役割を果たしている。
人間関係の難しさはあるが、クラブ活動はキャリア教育としても重要な役割を果たしていると感じている。例えば、異年齢の仲間との交流はどこかで経験をする必要があるし、日常的に何かを自分で考えて行動する自主性を育むには、クラブ活動の自治活動は、非常に重要である。
1,クラブ活動の持続可能な活動とは
・クラブを作る
・クラブを実施する
・クラブの成果発表
2,クラブ活動の持続可能な活動のために必要な要素とは
・意思決定については自発性を重視する・・教師の負担軽減
・活動の合意形成を作る過程があると楽しいと思える・・・続けられる
3,部活動が目的とる3つの視点
自己実現、・社会参画 ・人間関係形成

以上のような観点から、「生徒自身がやりたいと思えるクラブ活動」の環境を整えることを心掛けている。

続いて、中学校の現場の声を参考に議論を深めた。
つくば市立谷田部東中学校の八重樫通校長より
持続可能な部活動というテーマで、欠かすことの出来ない点は、より現場での問題をどう考えるかである。

例えば、現場では、部活動問題イコール労働問題の視点に必ず結びついていく。実際、すでに学校の部活動は破綻しているとも言える。

担当する教員は、朝6時過ぎに来て部活動の準備をし、夜も遅くまで生徒、保護者との対応に追われており、この部活動を学校単位でやっている限り、問題解決はないと考える。

ここまでの各地域の実践は、もがき苦しみながらの実践になっているが、ローカルモデルでしかない。まず、部活動に何を求めているのか、学習指導要領にきちんと示してほしいと考える。

学校経営の視点から問題を考えた。
・部活動の複線化とアウトソーシング
 SNSクラウドファンディングを活動利用したボトムアップ型の改革などの部活動の複線化とアウトソーシングが必要。
 部活動改革に向けて、学校は積極的には動いていない。後ろ向きなる理由がある。そこを改善しないと問題はいつまでも解決しない。
 財源については、週3日の活動で4千8百円の徴収しているが、この金額は1つの目安になるだろう。
 全国には、12万の部活があり、それを維持するためには、現有の教員兼業は必須であり、制度改革、意識改革は急務である。

※長沼先生主催のオンライン研究会があります。
「第9回部活動のあり方を考えるミニ研究集会(オンライン)」(部活動の地域展開を考える ~経済産業省の第一次提言を読み解く~)
日時:8月29日(日)18時~20時
・お申し込み
https://kokucheese.com/event/index/614970/