部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

部活動のあり方を考える研究集会メモ

先月、10月29日(土)19時から日本教育実践研究所主催「第20回部活動のあり方を考える研究集会」がオンラインで以下の要領で開催されました。
・テーマ:「メディアから見た部活動改革From2017To2022」
・ゲスト
中小路 徹(朝日新聞)藤井 孝良 (教育新聞)    
・インタビュアー
長沼豊(日本教育実践研究所)

部活動問題について、継続して問題意識を持ちながら取材をされてきた新聞記者のお二方に長沼先生がインタビューをするという企画でした。

たいへん興味深い会でしたので、以下ダイジェストで紹介します。

長沼:まず、部活動問題の取材に取り組んだきっかけを含め自己紹介を、、
中小路
部活動への取り組みは、スポーツ指導の事故、暴力的な指導に問題意識を持ち始めたところから。
自身も理不尽な指導を受けたきた立場でもあり、その経験とともに、改めて部活動を振り返り、新しい考え方で捉えるようになった。
藤井
部活動改革について教育現場では様々な意見が混在する現実があり、部活動の教育的効果も考慮しながら取材をしている。
まさに、先生方の意識のあり様はグラデーションで、生徒の思いも千差万別であるという点は忘れてはならいと感じている。
本当に考えなければいけない問題は、少子化にともなう問題と考えていて、今、部活そのものの存続に対する危機感を持っている。

 

長沼:部活動改革の進展についてどう見てきたか、
中小路
大阪の桜ノ宮事件から10年。この10年のスパンで、行政や学校の暴力的指導への取り組みに注目してきた。
一般的な安全対策以前に、その背景には生徒がモノが言えない雰囲気があった
視点として、長時間のやり過ぎ練習と強制的な加入実態、勝利至上主義で問題が彩られている点に注目した。
一番の根幹は、スポーツ推薦を根拠にした指導が、不自然な従順さを作ってるという問題があると感じた。
2018年のガイドラインでは、やり過ぎの是正が、2022年の提言では地域移行が、課題として示された。
今後は生徒目線の視点を取り入れた取材をしたい。
まずは、暴力指導についてアンケート調査をしている。10年前のアンケートでは、体罰を経験した生徒が3分の1、それを容認していた生徒が6割だった。
今どうなっているか。発覚しやすくなっているという面もあり、暴力的な指導は改善の方向にあると感じている。一方では、言葉の暴力への認識は今一つという気がする。
地域移行は生徒の選択肢が増えて、暴力的指導が淘汰されて無くなっていくと予想している。
藤井
2017年に取材をし始めて、自身の経験からも、教員の未経験な分野の指導についての問題を肌で感じてきた。
自分は神奈川県の強豪校にバスケ部に入部して、高1の冬に辞めて、文字表現の部活動に入部し、活動は緩い部活だったが、今の仕事に繋がっている気がする。
バスケ部を辞めた後、地域のマラソン練習会に参加して、一般のランナーと接し、今の部活動の地域移行についても、半分当事者の様な立場で捉えて取材をしている。
高校の改革がどうなるかについて、はっきりしていないことが気になる。せっかく中学で地域での活動が定着しても、高校で、また学校に残る仕組みは問題ではないか。

 

長沼:長沼豊への取材のきっかけは、
中小路
2017年の部活動学会の設立を機に取材をした。スポーツ報道で、スポーツを支えているものについてもスポットライトを当てようと考えた。
部活動指導員の人材難について取材をしてきたなかで、学校外の機関との連携を重視している長沼先生に注目した。
藤井
学生と現場の先生との繋がり方や姿勢に共感した。地域展開という発想に共感した。

 

長沼:部活改革の事例を紹介して欲しい。
中小路
生徒主体の指導として、以下があげられる。
1,ボトムアップ式:生徒主体の指導
2,自治スタイル:生徒が自治して決める
3,セルフジャッジベースボール:ボトムアップの野球版
4,時短と効率的な練習:静岡聖光学院ラグビー部の練習法
5,部活動サミット:生徒主体の実践報告
6,ゆる部活:遊戯性の高い種目での部活動

地域移行の例として、以下があげられる。
1,掛川市牛久市:合同地域部活動、複数校の合同。
2,柏市:各学校が地域クラブを立ち上げ、運営を包括する組織を作る。
3,利根市:大学が運営の主体になって学生が教える。単位取得を目的とし謝金が発生しない。
4,焼津市:学校にない部を外部に作る。
5,南牧村:複数の町村にまたがって活動する。過疎の地域向けモデル。

藤井
都内にボードゲーム部が10校ある。野球部のマネージャーに視点を当てて取材もした。
デジタル系部活動の動きに産官学が連携して盛り上げている。県立掛川西高校プロジェクションマッピングへの取組を生徒が交渉から初めて作っている。同校では、食物研究部で、地元の企業と連携してお弁当のメニューを考案する活動。探求型活動は、部活動の特性にあっていると感じた。
少子化問題への取組として、神奈川県二宮町フィージビリティスタディーの取り組みがある。

 

長沼:部活動改革への期待と懸念について
中小路
学校教育として行われてきた、この辺りを地域がどうとらえて引き受けるかがポイント。
地域の受け皿になる指導者も、教育的思考に目線がある指導者は少ない印象
話し合いのプロセスに教育的意味があるが、そのノウハウについても理解する必要がある。

藤井
外部に移すときに、単に競技を教えるだけではないという意味を学校と共有すべき
その調整が鍵になる。日本部活指導研究協会等の民間団体がその辺を見据えて活動している。


長沼:それぞれ課題意識を持たれて取材をされていることがわかった。今後も、様々な先進的なものを取り上げて発信をお願いしたい。最後に一言。
中小路
部活動改革について、過渡期が長くなると考えている。恐らく、各地域のクリエイティビティが試されることになる。今は、当事者への改革について意識の浸透が急務と考えている。
藤井
部活動の地域移行への目途の3年が終わった後が勝負時と考えている。持続可能な形の評価が固まるのではないか。その視点でこれからも取材をしたい。

 

※詳細はこちら

日本教育実践研究所ホームページ

https://onl.tw/wDM4est