部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

杉並区中学校の保護者会等予算型 民間委託モデル

こんにちは、日本部活指導研究協会通信です。


 現在、部活動の指導は学校の先生だけが顧問というかたちで任されるのではなく、外
部指導員というかたちで学校外の指導者も指導に携わるというかたちがある程度定着し
ています。


 教員の部活に関わる時間が労務管理上の位置づけが問題になるなか、教員の過剰労働
の問題と相まって、部活の指導を教員の仕事から切り離そうという動きがあります。そ
の動きの延長に外部指導員の導入が行われています。
 部活を教員の仕事から切り離した場合に考えられる問題は3つです。
1、部活の教育効果を捨てきれない
2、教員が抜けた後の指導者の人材確保の問題
3、教員の代わりに担当する指導者の報酬確保の問題


 部活指導をしたいがために教員になった先生もおられるほど、部活は学校教育に深く
根差した活動になってしまっています。それと財源の問題、人材確保の問題はなかなか
ハードルの高い問題です。


 ですから、そうそう簡単に地域のスポーツクラブや外部指導員に全てをお任せること
にいかないのが現状なのです。


 先日、部活コーチング派遣事業で全国で実績を上げているスポーツデータバンク株式
会社様を訪問する機会を得て、スタッフの方の意見を伺ってきました。


 スポーツデータバンク株式会社様は、杉並区教育委員会と提携して杉並区内の中学校
の部活に指導者を紹介する活動について時間を掛けて関わってこられたとのことです。


 興味深いのは保護者会等予算型の民間委託モデルというかたちで部活動支援体制を確
立されたというところです。


 プロコーチが公立の学校や公立の運動施設に積極的に関われない大きなネックは何か
。それは公共施設で営業行為が禁止されているということがあるからです。


 この公共施設をプロコーチが利用することについて規制する規則自体は今まで違和感
なく受け入れて来たのですが、よく考えると社会体育の普及の観点から考えるとどうも
合理的でないように思えます。


 杉並区の中学校の問題に戻りましょう。区立中学校の場合も、先ほどの例と同様の言
い方をすれば公立の学校内で営業行為は出来ないということになってしまうわけです。
 杉並区の場合は、先にも触れた保護者会等予算型と言って、予算の出どころは教育委
員会や保護者会からです。大きいのは保護者会が費用を集めて運営に関わったというと
ころでしょう。


 税金を動かすにはそれなりの手続きを踏む必要があり、その場に応じた対応には不向
きな面が障害になってしまうのですが、保護者から集めた私費を活用すれば柔軟な対応
が可能になります。


 私の考えでは、指導者の報酬について税金で賄うというのではなく、現在、中体連、
高体連が生徒会費などの私費を活用して大会運営を行っているのだから、部活指導者の
報酬も何らかのかたちで生徒会費と同様なかたちで徴収した私費を活用できればよいの
ではと思っています。


 スポーツ庁の方針では、今後、民間企業の取り組みと積極的に連携していくようです
。きちんと指導者としてのトレーニングを受けた指導者が各部活動に関われるような仕
組みになれば良いのですが。


 スポーツデータバンク株式会社のような取り組みが今後、市民権を得て大いに活用さ
れる時代になるかも知れません。
 

 

昨年末創設されたこの日本部活動学会が第1回大会 開催します。

日本部活動研究協会は、第1回大会を後援することになりました。

部活問題への発言がメディアで注目されている名古屋大学の内田氏の講演を予定しています。

その他、各方面の専門家をお招きして部活動の未来像を共有したいと思います。奮って参加下さい。
●大会テーマ
「部活動のこれまでとこれから」
●日時
 2018年3月25日(日)10時~17時15分
●場所
 学習院大学 西5号館202教室(※JR山手線「目白駅」徒歩5分)
申し込みは下記まで
https://ssl.kokucheese.com/event/entry/506989/

 

日本のスポーツは部活によって支えられています。
各方面の専門家が集結し部活動の未来像を共有します。

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日本部活動学会設立総会の報告・日本部活動学会会員申込みについて

こんにちは、部活指導通信です。


日本部活動学会の設立総会が名古屋で開催されました。
https://jaseca2017.jimdo.com/


 発起人の1人として参加して参りました。

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前半の総会では司会の役を仰せつかり、後半の研究集会ではリレートークの一員として部活改革構想をスピーチして来ました。
会場は超満員で特設席を設置するほどの盛況で、更にテレビ局2社、新聞社8社の取材も入り、社会の感心の高さを実感しました。


総会のなかで学会の理事の承認も頂きましたので、日本部活指導研究協会と日本部活動学会の連携をはかりながら、これからも部活制度の健全化に向けて活動して参ります。

 

◎日本部活動学会への入会申し込み
 設立総会の際に学会への入会申し込みの受け付けを行いましたが、当初想定をしていた100人を遥かに超える方の申し込みを頂きました。
部活動学会への研究内容に興味がある方は入会申し込みはこちらです。
https://jaseca2017.jimdo.com/入会申込/

 

部活研主催「不可能を可能にしたチーム力の作り方」指導者講習会の報告

こんにちは、部活指導通信です。

 

11月26日の部活研主催の指導者講習会の報告をします。

 先月末、予定通り指導者講習会を開催致しました。
 多くの先生方、部活関係者の方々、そして生徒の参加もあり会場はたいへん盛り上がりました。
 まずは慶應高校テニス監督、松永さんの講演「慶応高校テニス部の不可能を可能にしたチーム力の作り方」から始まりました。
 内容としては慶応高校テニス部の取り組んだ5項目について紹介して頂きました。
以下、講演の概略です。

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1、ルーティーンワークを決めて、やる気のスイッチを入れる。
・慶応高校テニス部が実際に行っているルーティーンワークに使われている集中力カードをスクリーンに映し、20秒間見つめてもらう実験をした。
・結果は集中力テストのビデオが使われ、集中力カードの効果を体感。
(このビデオがなかなか興味深く、会場が一気に和みいい雰囲気になりました)

2、「公智を養う」世の中には絶対的なものはない。
・「公智とは、物事にはそれぞれ良い面と悪い面がある。物事の中からより大切なものを選ぶという考え方」
・モンティーホール問題で、正解を得るための確率を検証して、少しでもより良いと思う選択を重ねることの意味を実感した。
・勝ったか負けたかだけではなく、正しい判断をし続けることが勝ったか負けたかより正しい判断をしたかどうか、正しい判断をし続けると自ずと勝つ確率を上げることになる。

3、「ポジティブな表現を心がける」
・セリングマンの水泳選手実験を紹介。ある水泳選手のグループを心理テストで楽観的な考えのグループと悲観的な考えのグループに分け、タイムを計測する実験。被験者には実際よりも遅いタイムが伝えられ、その後のタイムの変化を検証した。すると楽観的な考えのグループのタイムが伸び、悲観的な考えのグループのタイムは落ちたとのこと。
・この実験を紹介によって発言、行動、視線、表現などに気をつけることが、自分も仲間も心地よい状態を作り出せると実感する。

4、ひとつの行動が全体のイメージを作る。
・「応援されるチーム作り」を全員が意識することが、さらにより良い結果を生み出す。
・細かな一人一人の行動が、チームのイメージを作り、結果として活動しやすい環境を作ることになる。どんなことをしたら良いイメージをもってもあえるか話し合いをした。

5、「練習は不可能を可能にする」
・心も筋肉の様に練習によって鍛えられる。
・忍耐力などの非認知能力を養うことは、将来的な成功に役だつ。
・マシュマロ理論について説明があり、忍耐力を身に付けた者がその後を追跡調査した結果それぞれの進路で成功している者が多いという実験結果を紹介した。

 

 参加者の皆さんは部活内のチーム力を上げるために何をすればいいのか悩んでいる顧問の先生、生徒が多かったと思います。

 チーム力を上げるためのヒントをたくさん得られたのではないでしょうか。1つ言えることは、ただ強制するだけではチーム力は上がらないということだったと思います。

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 これからも部活研は、部活制度の健全化のために具体的に行動します。

部活とアルバイトについて

 こんにちは、部活指導通信です。

 放課後の生徒の動向といえば、遅くまで部活に汗を流し打ち込む生徒、バイト先に直行する生徒、ただ帰宅する生徒、いろいろです。

 当然、アルバイトに向かった生徒は、汗を流した分のアルバイト料が入るわけですが、部活はと言えばどうでしょう。アルバイト料に相当するものは実際ありません。

 こう考えると部活に参加する方が割りに合わないと考えてしまうのも無理ありません。身体を動かして働いた分のおこずかいが貰えて、好きなことが出来るわけですから。

 では、なぜ多くの高校生が部活に打ち込み汗を流すのでしょう。何かいいことがあるのでしょうか。思い出作りは学校以外でも出来ますからね。

 先日、あるテニスサークルの合宿に参加したのですが、そのなかに92歳のお父さんと一緒に参加されている方がおられました。

  テニスの後、その92歳のお父さんにいろいろお話を伺う機会を得ました。
 「一緒にテニスが出来て幸せだ。」ということと「テニスをやっていて本当によかった。」
ということを繰り返しおっしゃっておられました。

 そして、もう1つ、深く頷かされたお話しが、
「お金は使ってしまえば無くなってしまうけど、テニスが出来るようになるとずっと財産になるんですよ」と、

 ここで思い出したのが、高校時代にアルバイトをしてお小遣いを稼ぐ生徒たちのことです。

 実は社会人になるとスポーツに親しむ機会を作ることが難しくなってしまい、一から習うとなるとよっぽどの覚悟がいるわけで。

  学生時代に部活でスポーツに関わった経験は、まさに財産となって身に付いて人生を豊かにしてくれるのです。

  個人の財産には、使えば無くなってしまうものと、使っても使っても無くならないものがあるのでは。

  半永久的に無くならない自分を支える財産をどれだけ持っているか。高校時代にだけ手に入れることが出来る部活の経験は、やはり掛け替えのないものだと思います。

  働く経験は卒業後の人生で嫌というほどさせられるはずなのです。

  何を高校時代にすべきか、人生を豊かにするものとは何なのか、答えはそれぞれが思うことですが、よく考えて高校生活を送って欲しいものです。

 

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11月の部活研主催の指導者講習会について

部活指導通信です。
 11月の部活研主催の指導者講習会は慶応義塾高校テニス部、松永浩気監督の講演を予定しています。

 慶応高校は今やインターハイ常連校となっていますが、かつてインターハイ出場が遠い目標だった時期もあったとのこと。
 どこの県でも同じですが、県下に強豪校が何校かいて、その存在感でその他大勢の高校を圧倒しているという状況が普通にあると思います。
 多くの高校は、そんな強豪を破ってインターハイ出場なんて夢の夢みたいに思っていたりします。指導者も例外ではないでしょう。
 
 部活で学ぶべきことはいろいろあると思いますが、自分の想像を超えた成長を体験することで、人の可能性について学ぶこともその一つだと思います。

 実は、慶応高校も神奈川県下の大会に参加しながら、インターハイ出場を別世界のことのように思っていた時期がありました。
 そして、今やインターハイ出場の常連校になりましたが、そこまでの過程で部員と顧問にはどんな思いがあったのか。
 講演では、その辺のお話しを詳しくして頂ければと思っています。

 題して「慶応高校テニス部の不可能を可能にしたチーム力の作り方」です。
 是非、生徒と一緒に聞いてもらいたい内容です。
 多くの学校の参加申し込みをお待ちしております。


<部活研11月講習会>
※受付14:45~
11月26日(日)15:00
部活指導者講習会(15:00~17:00)

「慶応高校テニス部の不可能を可能にしたチーム力の作り方」
[講師プロフィール]
松永浩気
1984年9月3日生
全日本学生室内テニス選手権優勝
元プロテニスプレーヤー
日本ランク最高位19位
慶応義塾高校テニス部監督
慶応義塾幼稚舎教諭


・会場 東京都立大泉高校内  視聴覚室
・参加費 部活関係者2,000円、生徒無料(一般参加3,000円)
・お申込み・お問い合わせは メールinfo@bukatsu-japan.com もしくは Faxで03-4496-4518
まで お名前、所属(学校名等)、参加生徒の人数、直接連絡が取れるお電話番号、メールアドレス(携帯メール不可)、校内で参加される方先生がいらっしゃれば一緒にご記入ください。

部員の「心の安全基地」の存在

部活動通信です。

 部活の部員との関係は、顧問の先生にとって日々試行錯誤で取り組まれておられることでしょう。

 日々の取り組みのヒントになれば幸いです。

心理学用語に「心の安全基地」という用語があります。

 「心の安全基地」は、不安をいつでも受け止め、安心させてくれる場です。思春期や青年期、成人になっても、やはり必要にな場です。
安心して素の自分に戻り、どんな自分でも許される場があってこそ、また外に飛び出し、他人と関わっていこうという気持ちを持てるものです。

 我々大人でも、日常的に仕事での駆け引きや表面的な付き合い、社会人や親としての責任ある行動を求められ、外界との関わりは緊張と気遣いの連続ですよね。

 それでも、安心してよろいを脱ぎ、弱音を吐きだせる場があればこそ、「また頑張ってやっていこう」「チャレンジしてみよう」という勇気を持てるものだと思います。

 ミスが許されない緊張の空間とミスが許されるゆとりの空間と両方持っている選手は、やはり強いです。

 失敗したら責められるという思いのもとでは、思い切った冒険は出来ません。ミスのない「判断」と思い切った「決断」、この2つの心理が大きな結果を導きます。

 私の経験では、勝負強いアスリートほど、理屈抜きに自分を認めてくれる人が必ず周囲にいて、心の安全基地の存在感を保っていたような気がします。

 もちろん常に安全基地のなかで緩い環境にどっぷりでは何の育成にもならないということは言うまでもないですが、「心の安全基地」の存在を確認してみてはどうでしょう。

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