部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

部活動指導者が成長する全国的な仕組みが欠けている

ドイツ人サッカー指導者ゲルト・エンゲルス氏に学ぶ
◆私ごとですが、私は40代で教員を辞め、オーストラリアの大学でテニスコーチをすることになり、その時から考えが180度変わりました。

生涯に渡ってスポーツを楽しめるようにするためにどうすればいいのか、学ぶ喜び、達成の喜び、仲間のいる喜びをスポーツを通じて、長期的な視野で伝えなければと思いました。

そのためには、日本のスポーツ指導者の意識を変える仕組みを作らなければという思いが、この協会設立のもとになっています。

先日、ゲルト・エンゲルス氏の「日本サッカー育成論」のなかで、『「1人ひとりをもっと大事にする」指導を実現すれば、より多くの才能が芽を出す』との記述を読み、深い共鳴を得ました。
https://the-ans.jp/column/331282/

◆そもそも、現状の日本のスポーツ界にある理不尽な強制と押し付けが、どう引き継がれてきたのか、その大もとはというと、太平洋戦争が終わって、日本に新しい教育が始まった頃に遡ります。その頃、国民は部活動を通して目新しいスポーツに触れることになるのですが、指導者の位置付けや、指導方法などの経験もなく、曖昧な体制からの始動だったので、戦前の経験が引き継がれます。

つまり、軍事教練的な上意下達や一方的な命令の指導法が部活動に根付いてしまったのだと言われています。そこまでの教え方として、軍隊への教育しか知識がなかったので、そこから始まって今だに引きずっているわけです。

はやり、日本の場合、理論的に分かるということによって上達するという考え方が多くのスポーツ指導者に希薄で、もともとの運動センスと膨大な運動量のみがパフォーマンスを作ると信じられているという傾向は根強くある気がします。

だから、中学までに結果を出した選手を強豪校に集め、あとはひたすら何も考えさせずに長時間練習に打ち込ませるパターンに落とし込み、学校の名声にあげて、自分のキャリアアップに繋げるかたちが、多くの日本選手のプロまでの経歴になっています。

◆日本人の練習量は世界一です。オリンピックや世界選手権で盛り上がって、たくさんメダルも獲得してますが、人口比でみると世界のなかの実際の立ち位置が見えてきたりします。実際、指導者の指導法のレベルはまだまだです。

独裁的な指導がなくならない限り、この状態は続くでしょう。指導者育成の仕組み、つまり、部活動指導者をガバナンスする全国的な仕組みが欠けていることが事態改善をための最も大きなネックになっていると考えます。

いまだに指導者は、好き勝手にそれぞれが職人技で指導する方式が中心にあり、、組織的に成長する体制になっていないから、科学的な指導、公平性のある取り組みに欠けて、指導者は自己流でやった者勝ちの状態になってしまっています。

◆大事なことは、育てようという気持ちなのだと思います。下手な生徒は下手なまま、上手い生徒を競争原理に乗せて絞り上げる仕組みのもと、スポンサーのために、学校のために、その結果を利益に結びつけることが目的になりがちです。

組織にとって成果と成長は両輪であり、成果は必要ですが、ある特定の部分について、現状、その成長の仕組みを放棄している体制があることが残念でならないです。日本全体を考えると、大事な未来を一部の企業や学校の宣伝のために、みすみす無駄にしてしまっている気もします。

今、中体連と高体連は、各学校や生徒からの会費と行政の補助金で運営されていますが、大会運営以外に手を回す余裕がありません。ですので、それと同等の部活動指導者の全国規模の組織が実現し、指導者の派遣、教育などを含めた部活動の運営などが出来る新制度の構築を願っているところです。