部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

学生団体Teacher Aide主催「 部活動の“地域展開”を考える時間 」ダイジェスト

8月25日にZOOM会議にて 、学生団体Teacher Aide主催によって部活動の“地域展開”を考える時間 」というテーマで公開研究会が開催されました。
 
本研究会は、教員の意識改革・教育を社会の関心ごとに・愛あるコミュニティの想像、この3つをコンセプトを掲げた学生団体Teacher Aideが主催する部活動の問題を考える研究会でした。
 
以下、印象に残った発言をダイジェストとしてまとめました。
 
冒頭、代表のじんぺーさんの挨拶から始まり、続いて登壇者の発表がありました。
学生団体Teacher AideのHP
 
■登壇者発表
●神谷侑樹(茨城部活動問題対策委員会代表)
・ここ10年、部活動問題の記事が増えた。だいたい2010年代前半くらいから体罰の問題、後半から労働問題が加わった印象。
・学校現場で、顧問選択権を追求をしている。なぜなら、労働には対価があり、その要求は権利だから。
・必要なのは抜本的な環境改善で、具体的には思い切った業務削減が必要では。
・今後、「地域部活動」をどうするかが大きなポイントになる。
・学校部活動を担う主体は、そもそも誰なのか。地域に展開しても、結局、学校で担うという結論になるのでは。
・地域展開した場合、人材不足の懸念と双方の連携上の課題がネックになってくる。
・部活動ではなく、地域活動という名前にすべき。
・ある程度、地域の主体性に任せるかたちが将来を見据えた地域移行になる。ひいては、地域の活性化につながる。
 
●長沼豊(学習院大学教授)
・今やっている部活をそのまま移行するという意味に誤解されるので、地域移行ではなく、地域展開という言葉の方が適切だと考える。
・目指すところは、持続可能なかたちで、卒業しても部活を続けられるかたち。在学中の引退はナンセンス。
文科省が2021年9月に発表した内容について、週末だけの規制は現実的ではない。平日はどうするのか。
・スムーズな地域展開のためには、合同部活動と拠点校方式を念頭にすべき。
・自分の学校以外での部活動の場面が増えるので、当初は子供たちに移動に慣れてもらう必要がある。
・部活の目的を改めて設定。今までは、同じ目的に向かっていたが、ゆるい部活動もあったり、本格的な部活動もあったり、同じことを一緒にやりましょうという発想を変えるべき。
 
●八重樫通(矢田部東中学校長)
・「学校文化」という「パンドラの箱」を乗り越えた議論が必要。
・日本の教員は、他国に比べて、年間勤務時間数は多いが、年間授業時間数は少ない。
財務省が言ってること。
(1)日本の教員の持ち授業時数は少ない。部活動を含めた業務の適正化を指摘。
(2)部活動の時間が多いから、そこを改善するべき。
(3)人員を増やす前にやるべきことがある。人を増やすことが答えではない。
・給特法を知っている教員は実は少ない。部活動問題への認識にズレがある。
・学校とは別に、市民団体を立ち上げて、受益者負担で指導を受けている。
・部活動の割合を減らして市民団体による活動を増やした。
・地域のスポーツクラブの協力を得た。
・この部活動の問題は、複線化してアウトソーシングを活用して取り組むべき。例えば、地域部活動、代替活動、学校部活動の3タイプの活動を平行して走らせる。
・どうしても教員の兼業制の活用は、大きな前提となる。
・文化なのか商業サービスなのかという問題は、学校と地域スポーツ企業の関り方の議論になる。
・実は、教員には、部活をやりたいという教員は意外と多い。その事は、踏まえる必要がある。
・実際、教員の仕事の評価基準は、明確でないという特性があるが、一方、部活動は仕事の成果が目に見えるし、ある意味分かりやすい。
・部活動の指導者報酬を税金で賄うのは難しいので、世の中のあぶく銭を活用しようと声をあげている。
 
■パネルディスカッション
◆神谷:地域展開した場合、最終的にどこに責任が行くのかが疑問。学校なのか、自治体なの、地域団体なのか。
 
◆八重樫:法的には、校長が認めなければ部活について止めること、又は少なくすることは出来る。やるやらないの権限は校長にある。まず、現場からボトムアップで、現場を反映した活動で、施策を動かす、その結果、物事を動かすことが出来ると考えている。何かポジティブな動きをしながら世の中を変えることは出来るのでは。
 
◆司会:矢田部東中の取り組みについて、他の学校は?
 
◆八重樫:3校がやっている。あと2校が加わる予定。教育委員会に向けて合意形成をして確実に動いている。
 
◆長沼:出来ることから出来る立場でしていくのが改革の基本スタンス。どんな改革も反対はある。反対の意見をくみ取りながら進めないと、必ず歪みがでる。最終的には、60年で作りあげた仕組み、コンクール、大会の仕組みを変えないと。
 
◆司会:顧問拒否の行動のしわ寄せにどう考えるか?
 
◆神谷:法律的に認められた権利なので、個々の誰が負担するかという問題ではない。しわ寄せにならない環境づくりを県が作るべき。何であの人が、、という話にならないように。
 
◆司会:矢田部東中の取り組みについて、教員や生徒の反応は?
 
◆八重樫:先生方は賛成している。子供たちは8割が充実してると回答、保護者も支持している。結局、部活動改革の向かうべきところは、先生たちのやりがい確保では。
 
◆長沼:部活をやらない宣言は少数です。とは言え、部活の数を減らすことは少子化の流れで避けられない。今は、教員同士が首を絞める仕組にみなっているので、学校だけでなく地域を巻き込んで話を進めるべき。
 
◆司会:兼業についての考えは?
 
◆八重樫:今、現在、兼業届を出している教員は1人。年間数十万円の収入。学校内指導は減らしたが、学校外で指導しているので指導時間数は変わらない。やはり、財源が大変だと思う。受益者負担補助金をどういうかたちで導入するか。
やはり、指導者には指導費を払う必要がある。その前提には保護者の反対もあるかも知れない。方法としては、企業支援も期待できる。いろいろな形で調達する方法はある。しかし、人の確保はもっと大変だと思う。
 
◆司会:問題は多いが、、
 
◆八重樫:しばらくは教員の兼業で人材を賄うしかない。12万の部活をカバーできる指導者を探すのは至難の業。
 
◆神谷:人を集める責任は学校なのか。
 
◆長沼:教育委員会が音頭を取っている場合もある。現状では、学校推薦で教育委員会が認める手続きが多い。
 
◆八重樫:指導者育成の仕組みを作るしかない。筑波大では、企業がスポンサーについてプランを進めている。やはり、大学生では安心できない。やりたい人に適正な対価を払って指導する仕組みは必要です。
 
◆司会:全国的な仕組みが必要では。
 
◆長沼:サッカーなど先進的な取り組みがあるが、競技別の団体が指導者ライセンスを作るべき。それと、全国共通して学校単位での参加資格にこだわると広がらないので、中体連、高体連との話し合いが必要。スポーツの場合、どうしても大会を目指すので。学校部活の大会のかたちを変えること、これこそがたいへんな意識改革。
 
◆司会:最後に一言。
 
◆八重樫:部活動は、文化なのか商業サービスなのかという視点で考えて欲しい。部活が教育でないなら、学習塾が学校でやっていいということになる。
 
◆長沼:私学のモデルを参考にいろいろなゴールを見据えて改革を進めていけば良いと思う。
 

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