部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

部活動指導者研修会「新聞記者の取材から見えてきた新しい部活動のかたち」

現在の部活動改革の動きを作った部活動の事例を取材してきた中小路記者に講演をお願いしました。
取材のなかで見えてきた新しい部活動のかたちと、今後、部活動指導、スポーツ指導の形態はどう変わるか、政府の政策などを睨みながから今後の部活動を読み解きます。

後半は、長年に渡りバスケット部顧問として、また高体連バスケットボール部の役員として、部活動指導に携わってこられた江戸川高校の奥谷校長と中小路記者との対談です。

現在、部活動改革が謳われているなか、一方では、過酷な部活動へのノスタルジック、不合理、理不尽によって得られたメンタルタフネスへの評価など、依然とし根強い評価と価値観があるなか、今後、新しい部活動を探っていくにあたり、それらの価値観とどう向き合って行くべきかについて語って頂きます。
※学生の参加は無料です。今後教職を目指す生徒、部活動に参加している生徒の皆さんにお声掛け頂き、部活動について考える機会にご活用下さい。

日時:6月26日(土)14時~16時
場所:オンライン会議ソフト「ZOOM」
講師:朝日新聞記者 中小路徹
※「脱ブラック部活動」の著者であり、「部活動改革の今」などの特集記事を担当。
内容:
第1部 講演「記者の取材から見えてきた新しい部活動のかたち」
第2部 対談「文科省と現役顧問が考える部活動理想像のズレ」
対談講師:都立江戸川高校校長 奥谷雅之 

参加費:3,000円
※学生無料

申し込み:
https://kokucheese.com/event/index/610556/

第4回日本部活動学会に参加して~内海和雄教授の講演から~

第4回日本部活動学会に参加して
 3月27日にオンライン開催で、第4回日本部活動学会が開催されました。自由研究発表や部活動研究の専門家によるシンポジウムがあり、充実した内容でした。
 特に印象に残ったのは、一橋大学名誉教授の内海和雄先生の講演でした。始めて聞く方には、刺激的な講演だったのでないでしょうか。いずれにしても、部活動研究では、草分け的な研究者ということもあり、内容の濃い話を聞くことができました。ご著書には、1998年に出版された「部活動改革」があります。
 
■内海先生の主張で大きく頷いた部分2点について
1、国として指導者育成体制に取り組むべき。
 これは、まさに我々、部活研が取り組んでいる方向性そのもので、国や企業には、トップアスリートを宣伝やPRに使うことだけではなく、そのアスリートを育てる仕組みを作り、指導者の意識作りの根本から取り組んで欲しいと思っています。
 基本姿勢としては、部活動指導員を国家資格また公的資格として制度化し、現状のスポーツ・文化が、日本社会に果たしている役割に見合うガバナンス体制を構築されることを願いながら活動をしており、そのための試行的な取り組みが、当協会が主催をしている部活動指導員検定事業になります。
 
2、国の経済規模の割に教育関連、特に部活動関連予算が少ない。
 スポーツや文化活動の社会的な気運や関心の高まりは、経済、政治、教育のプラス面に大きく貢献してしていますが、それに見合う予算が計上されていないのではと思っています。
 例えば、全国の中高全1万5千校に対して部活動指導関連予算として1校に1千万円ずつ計上したとしても、千5百億円です。オリピック予算の10分の1以下です。どうでしょう、部活動の果たしている役割、スポーツ・文化の果たしている経済効果などを考えれば予算規模として想定可能な範囲内と思うのですが。


■以下、内海先生の講演の要点をまとめてみました。
◎戦後の部活動(1950年代〜)
・部活動は、広い深い人格形成の場として承認され、学校教育の中心を占め、イギリスから世界へ普及したもの。
・戦後すぐ「スポーツよって民主主義を植え付ける」という占領軍の方針のもと部活動が推進された。
・自主的なスポーツ活動として始まった部活動には教師は介入しないことが原則だったが、学校も教師も民主的な部活動の運営などほとんどわからないなか、その活動は放置されつつ継続されていった。
・指導者の位置付けや、指導方法なども曖昧な体制だったので、戦前の経験が踏襲され、軍事教練的な上意下達や一方的な命令の指導法が部活動に根付いてしまう。

◎高度成長期の部活動(1970年代〜)
・経済成長とともに、成果主義権威主義が社会の価値観の中心となり、部活動でもより良い結果を出した教員の校内での存在感が大きくなり、「部活人事」という名の下の異動が増えた。
・結果を求める思考の先に、部活動の活動頻度の増加があり、よって教師も生徒も「部活づけ」の状態に陥った。家庭で言う事を聞かない子供の自由な時間を部活で埋めること、つまり「部活づけ」という指導を学校が担うことになる。
・「部活づけ」のもう一方の効果は教員の管理であった。文部省には、日常の多忙によって権利の主張から意識をそらすという意図があったのではないか。
・「生徒の意欲に応えるべきだ」など、部活動の正当性を前面に出し続ければ、教員管理に部活動は有効的に機能した。よって、部活動中の問題については、文部省は分かっていて何もしないという「無策の策」を取り、それが教員管理に最大の効果を生むことになる。そして、予算提示のない答申が繰り返され、部活動問題は深刻化を増していくことになる。

◎国の条件整備のための義務
・スポーツ政策は、福祉政策の一部であり、「Sports for all」の理念の実現に他ならない。現在の日本は、GDPは世界3位だが、予算の使い方は軍事や産業基盤の整備費に偏っている。企業国家であり、軍事国家であり、非福祉国家であると言える。
・国民スポーツの発展に、国家の条件整備の義務として大きく3つある。1)スポーツ施設の整備、2)指導者養成制度の整備、3)地域スポーツクラブ育成
OECD内のGDPにおける教育費の割合は、28か国中24位という低さ。さらに、スポーツ関連予算のGDP比は、日本を1としたら、イギリス10倍、フランス11倍になる。よって、上述の国民スポーツの発展に、国家の条件整備の義務を果たすことは難しい。
・日本国内の地域のスポーツ施設とスポーツクラブは減少傾向にある。このことは国民スポーツの発展にはマイナスであり、医療体制の維持、スポーツする権利の保証を損なうことになる。この状態で部活動の地域移行を考えるべきではない。
・オリンピックのレガシーの中心は何かと言ったら国民スポーツの発展だが今の日本はそれをないがしろにしている。開催都市の東京都でさえ、オリンピックとスポーツの発展を関連付けた政策が見られない。
・部活動の活発化の答えは、1)教員数を増加させる、2)部活動関連予算を増やす、3)部活動指導者の負担軽減、この3点である。
 

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文化庁主催「地域での文化部活動のあり方について」に参加して

文化庁主催「地域での文化部活動のあり方について」に参加して
3月3日に文化庁と三菱総研の共催で、今後の文化部活動について、意見交換会がありました。
出演者は、文化庁の部活動担当官、三菱総研の調査官、芸術系大学の先生と地域部活動の実践をされている斉藤先生、そして部活動研究でお馴染みの長沼先生、妹尾先生というい顔ぶれでした。
 
内容は、部活動全般についてと、特に「文化部活動の地域移行」の今後の展開について話し合いがなされました。3時間の内容を全て紹介は出来ないので、印象的なフレーズを時系列で紹介します。

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吹奏楽
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・令和5年を目途に、休日の部活動を地域に移行する準備をしている。(文化庁
・モデル事業で検証しながら進めたい。まずは、モデル地域を指定して、それを踏まえ全国に展開する。(文化庁
・複数校が合同した部活動は、地方大会のあり方が今後問題になる。(文化庁
・大会によって子供たちが疲弊してはならない。(文化庁
・調査の結果、ガイドライン策定後も、合唱部・吹奏楽部の活動日数は多いまま。(三菱総研)
・地域の施設は学校部活動での利用の割合が多い。(三菱総研)
・現段階では、地域移行について検討はしているが、実施には至っていない。(三菱総研)
・文化部活動は、指導者の確保より活動場所の確保の問題が大きい。(三菱総研)
・地域移行は、自治体の協力は必須。(三菱総研)
自治体は、部活動を地域振興に繋げたいと期待しているという事実もある。(三菱総研)
・教員の負担軽減という視点だけではなく、地域の文化継承の観点での取り組みと考える。(三菱総研)
・地域部活動の学びも狙いは、個別最適な学びと協働的な学び。(斎藤)
・地域部活動は、社会的道徳的責任と政治的リテラシーを形成を目指したシチズンシップの育成の場になる。(由井)
・倶楽部は、共に楽しむ場と読める。クラブの根本に立ち返る必要がある。(長沼)
・地域移行ではなく地域展開という言葉の方が、受け入れやすい。緩やかに移行のためには、言葉の使い方も大切。(長沼)
・中学生が地域との交流をする場が少なくて、地域から中学生が消えたと言われた。(芸術系大学)
・現状では、街の文化活動に中学生が参加するには、ハードルが高い。(芸術系大学)
・2つの方向への働きかけが必要。学校の中と学校の外。(文化庁
・部活動は、大学の教員養成の教育課程には位置づけがない。(芸術系大学)
・指導する教員も自分自身の部活動の経験で指導するしかない。しかも、実際は教科指導より時間がとられる。(芸術系大学)
・指導する場合、自身の過去の経験がベースになっていることが問題。(芸術系大学)
・学校教育に理解がある人が指導者として配置されか疑問。(芸術系大学)
・意識改革は絶対に必要。教員の意識改革は並大抵ではない。(長沼)
・まずは、生徒が他校に移動することに慣れる必要がある。指定バスを利用も考えられる。(長沼)
・部活動を、目的別に部活動を再編すべき。コンクールを目指しても、目指さなくても、参加できるように。異年齢でも、、(長沼)
・「地域移行は、教員の負担軽減のためなのか」それだけでは、理解は得にくい。(妹尾)
・「さまざまな意義のある部活をなぜ切り離すのか」という現場の意見、ある意味本音、、(妹尾)
・部活動改革を進められているが、残業80時間を超えた先生の割合は変わらない。(妹尾)
・「部活命」という先生がいるでの、丁寧な説明と子供目線を忘れてはならない。(妹尾)
・部活を学校に意義があるなら、学校内外のいろいろな方々に関わってもらう体制であるべき。(妹尾)
・地域移行で、経済的な負担が増えるなら限定された生徒のみのものになってしまう。(妹尾)
・地域移行しても、教員の生徒に対する責任、指導責任は、変わらないのでは。(妹尾)
・「地域への向けてのガイドライン」が必要になる。(長沼)
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運動部活動の地 域 移 行 モデル案 の方 向 性

 

下記に提示したモデルプランは、「部活動指導員」を組織化した場合の新団体を想定して、行政がその新団体を通じて部活動を支援するという組織図の一例を示した。

 

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運動部活動の地域移行の組織図モデル案


 

「地域との連携と新団体の組織による項目別部活動運用内容」

項目

運用内容

新組織

部活動指導員の管理運営する新団体。

部活動の種類

生徒は、参加希望票を各学校を通じて教育委員会に提出する。その後教育委員会は各校に各種部活動を配置する。

教員による指導

教員は、部活動指導を希望する者が兼業届を提出し、部活動指導員として新団体に登録する。

新団体の財源

国、地方公共団体からの助成金又は収益事業、また、民間団体、プロ選手、地域、個人からの寄付等をあてる。例:育成報償金制度

指導者の派遣と指導料

部活動指導員の派遣と指導料の支払いを担当する。指導料は新団体にプールされた財源から支出する。

指導員の資格

新団体は学校教育の一環としての部活動運営の知識を問う資格認定を行う。この資格を以って現行の「部活動指導員」の業務独占資格とする。

指導員の研修

新団体は最新の指導法を学ぶ研修を定期的に開催し、受講を資格更新の条件にする。

施設の利用・管理

活動施設は、学校施設と公共施設を部活動と地域スポーツクラブと共有する。

 

「部活動指導員」は、資格分類のなかでは特殊な「任用資格」という部類に属している。公務員として採用された後に名乗ることが出来る、つまり「後づけ」の資格とも言える。この資格について選抜と育成の局面をきちんと整備し、更に財源の問題を改善する仕組みとして、新団体を組み入れた地域との連携の新しいかたちが必要なのではないか。

 部活動は、自主的自発的に行う活動という定義が基本にあり、言い換えると学校内に自然発生的におきる活動とも言える。これを行政の監督下において管理運営することとは別の発想も、必要ではないか。

つまり、部活動は、地域の祭などの行事と同様に命令されて行う活動ではない。この場合、先にあげた掛川市の実践例の様に、行政は援助する、支援する立場に立つことが、むしろ適切な関係になるのではないだろうか。

従って、指導報酬については、公務員の給与体系に組み入れることが難しい現状がある以上、国や自治体は、新団体に補助金として拠出援助し、その補助金を指導報酬として活用するということも考えられる。

 

 

 

 

協会スタッフ募集のお知らせ~新しい部活動制度を一緒に作りませんか~

協会スタッフ募集のお知らせ
当協会は、部活動指導者の意識とスキルの改善に取り組み、今後も活動を前に進めて参ります。
活動の趣旨および事業内容にご賛同、ご協力いただける方、協会のスタッフとして私たちと一緒に活動を共にして頂ける方を募集します。
◆業務内容
1、検定事業担当
検定試験の普及活動、及び運営と管理など。
2、研修事業担当
更新研修の企画及び運営と管理など。
3、事務局担当
受付業務、会計、名簿管理など。
4、広報担当
HP管理及びPR活動など
※文化部系の部活動の関係者歓迎です。
[条件]
1)活動の趣旨および事業内容にご賛同、ご協力いただける方
2)パソコン等でオンライン会議に参加出来る環境におられる方
3)ボランティアで責任を持って業務をお願い出来る方
[募集人員]若干名
[応募期間]随時
[応募方法]メール又はFBメッセージ等でお問い合わせ下さい。
お気軽にお問い合わせ下さい。
info@bukatsu-japan.com

部活動の地域連携モデルプラン~部活動指導員を組織化した場合の部活動運営について~

部活動を地域移行にする案を文部科学省が検討しています。

協会内の研究材料として用意した「部活動指導員を組織化した場合の部活動の地域連携モデルプラン」を紹介します。

 部活動は、自主的自発的に行う活動という定義が基本にあり、言い換えると学校内に自然発生的におきる活動である。これを行政の監督下において、管理運営することに無理があるのではないか。

 つまり、地域の祭などの行事と同様に命令されて行う活動ではない。この場合、行政は援助する、支援する立場に立つことが、むしろ適切な関係になるのではないだろうか。

 以下、モデルプランは、部活動指導員を組織した新団体を想定して、行政がその新団体を通じて部活動を支援するというかたちのプランです。

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部活動指導員を組織化した場合の部活動運営モデルプラン

特徴

1、部活動指導員の管理運営する新団体を組織する。

2、生徒は、参加希望票を各学校を通じて教育委員会に提出する。その後教育委員会は各校に部活動を配置する。

3、教員は、部活動指導を希望する者が兼業届を提出し、部活動指導員として新団体に登録する。

4、新団体の財源は、国、地方公共団体からの助成金又は収益事業、また、民間団体、プロ選手からの寄付等。

5、新団体は、部活動指導員の派遣と指導料の支払いを担当する。

6、日本スポーツ協会の公認スポーツ指導者と民間指導者を部活動指導員として新団体に登録する。

7、新団体は資格認定・研修について運営管理をする。

8、活動施設は、学校施設と公共施設を部活動と地域スポーツクラブと共有する。

 

「全日本中学校長会」編集の機関誌への記事

「全日本中学校長会」編集の機関誌「中学校」に寄稿の機会を頂き、「部活動指導員制度の展望と課題」と題して4ページほど記事を書かせて頂きました。
文部科学省、各都道府県教育委員会、また全国の公立中学校の校長に向けて発行される機関誌とのこと、拙稿が部活動制度の健全化に向けて一助となれば幸いです。