部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

「怒らない部活指導を考える」シンポでわかったこと

3月5日、長沼先生と益子直美さんをお招きしてのシンポジウム「怒らない部活指導を考える」では、怒る指導について考える良いきっかけになりました。
怒る指導を我慢するのは難しい、だから、、、、
▲指導者に指導スキルがない
 往々にして、指導者が指導スキルがない状態で、生徒に指導をしようとすると「怒鳴る」という方法が、一番手軽で効果があるように思えてしまうのではと感じました。
 つまり、ここをこう直せば良くなるとか、この方法で改善するとか、具体的にアドバイスする方法を知っていたら、それを実行すれば良いのですが、その方法を持ち合わせていないので、怒鳴ったりすることで漠然と反省させる空気を作るしかなくるのでは。
 また、失敗した生徒を怒る指導をしていると、中身はともかく見た目は何となく指導しているように見えて、指導者としての仕事をしている雰囲気になり、自己満足が得られるということになることもあると思います。
 実は、人間にとって人に罰を与える行為はある種の快感を伴う行為なのです。そこに気づく必要もあるかも知れません。

▲崩れた時の立て直しの発想が出来ない
 怒られた方は、もう怒られたくないため、長時間のきつい練習を一生懸命やるのですが、やっている意味や目的を理解していないまま、決められたパターン練習を正確に再現することに徹することになります。
 パターン練習の繰り返しは必要ですが、それをするための必要な技術については、丁寧に教える必要があります。さもなければ、闇雲にたくさん練習をして、偶然出来た感覚だけを頼りにしてしまうので、選手は、崩れた時の立て直しの発想が出来ない状況に陥るのです。
 つまり、怒ることは、危険回避や抑止力に効果はありますが、創造力や発想力への効果はほぼ得られないということです。
 だから、「何でやらないんだよ」とか、「何で出来ないんだよ」と怒られても、何も答えられないわけです。

▲自分のやるべき事を自分では理解してない選手
 もし、仮に日本一になることが究極のゴール、つまり世界を考えないなら、怒る指導でいいのかも知れません。ただ、怒られてネガティブな感情に支配されている時は、学習効果は極端に低くなるという研究結果もあるこ
とから、その選手は、自分のやるべき事を自分では理解してない選手なのではと想像してしまいます。
 怒られて怒られて、世界的なレベルになった選手もいます。だから、怒ることが効果があると主張する人もいます。しかし、実は怒らなければその何倍もの選手が同じレベルまで育った可能性があるということなのです。
 例えば、水を飲ませない指導でチャンピオンを育てたという人がいたとしたら、ちゃんと水分補給していたらもっと大量にチャンピオンが育ってますよということです。

▲怒ることを我慢することに力を注ぐのではなく
 さて、ここまで、怒らない指導の効果を述べてきましたが、いろいろ頭で理解しても、怒らない指導で上手くいくイメージがつかない指導者も多いことでしょう。では、どうしたら良いのでしょうか。
 ポイントは、生徒が失敗した時に怒ることを我慢することに力を注ぐのではなく、怒らずに済むよう日頃から様々な失敗を予測して指導すべきということです。ですから、指導者の予測力がポイントになると考えます。出来るようになるためのお膳立てとか、組み立てが上手くいけば、怒ることは自ずと少なくなるわけです。
 やはり、結局は、指導スキルを磨くに尽きるのではないでしょうか。

 

 

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