部活指導研究協会通信

日々、生徒と真剣に向かい合う部活関係者に送ります。部活動が果たすことの出来る役割を最大限に発揮させるための活動を行っています。

2021年12月18日開催:日本部活動学会主催第4回研究集会の報告

2021年12月18日開催:日本部活動学会主催第4回研究集会の報告
昨年、2021年12月18日に大阪体育大学におきまして、日本部活動学会主催第4回研究集会が開催されました。
テーマは、
「いま、求められる「部活動」のサポートとは? ―持続可能なマッチングを探る―」
その内容について、「基調報告」と「シンポジウム」のダイジェストにまとめました。

まず、会の冒頭に前会長の長沼豊先生(学習院大学)より、基調報告がありました。

〇長沼豊副会長より基調報告
・現状認識として、総合的に見て、学校外から学校中へのサポートは、教員の負担軽減のため、専門的な指導のためなど、いろいろ意味で意義があると考えている。
・問題は、サポート人材のミスマッチや人材がみつからないということ。
・ミスマッチの要因として、
 1、そもそも部活動そのものが、まだまだ適正化されておらず、 善意で成り立っているなどボランティア依存体質が残っている。
 2、部活動指導に対する契約の概念が乏しい。
(契約をするという発想にシフトしないと解決しない。)
・紀要第4号のアメリカの部活動についての報告は、次の点で興味深かった。
 1、課外活動より教育課程を優先することが前提であり、全員顧問制ではない。
 2,外部指導者は教員免許を持っていることを前提としている。
・外部指導者からの苦情にも耳を傾ける必要がある。
・部活動の最適化のためのポイント3つ。
 1、生徒の自治
 2、生徒・教員の荷重負担の解消
 3、大会・コンクールの根本的な見直し
・これからの展開として、改革は必要だが荒療治は禁物と考えている
・いずれにしても人材サポートシステムを確立する必要がある。
・餅は餅屋であり、やはり、その筋の専門家に任せることが大事。専門外の学校の先生に任せるのはやはり問題である。

続いて、以下のお三方の実践報告があり、その後のシンポジウムに議論を繋がっていきました。
1、民間企業→ ソフトテニス・オンラインスクールの運営にみるマッチングの工夫について、中村鉄太郎氏(株式会社GO代表取締役社長)より20分間の実践報告。
2、運動部→ 運動部活動改革プランの一つとして学生を指導者に養成するシステムを構築したが、その後の運用状況やマッチングを考慮した大阪府泉大津市教育委員会との取組みについて、小林博隆氏(大阪体育大学准教授)や比嘉靖氏(同大学准教授)らによる20分間の実践報告。
3、文化部→ 大阪国際滝井中・高等学校の吹奏楽部における活動課題について、朝倉洋氏(大阪国際学園芸術文化教育センター長)から20分間の実践報告。

 

 

○研究協議シンポジウム
今回のシンポジウムは、神谷拓氏(関西大学)の司会で、パネリストは、実践報告をされた中村鉄太郎氏、小林博隆氏、朝倉洋氏他が登壇されました。

以下、協議のダイジェストです。
司会:神谷拓会長(関西大学

神谷:これから先の部活動指導の形態についてご意見を。
中村;地域スポーツクラブの大会と部活動の大会を合同で開ければと考えている。
小林;大学生との協働スタイルを展開出来れば考えている。
朝倉;現時点では、吹奏楽は地域のスポーツクラブ的な受け皿がないので、学校に対するサポートの充実を考えることしかない。
   
神谷:将来的なコストの問題をどう捉えるか。一つの部活で年100万円かかるという試算もあるが、どう思うか。
中村:スポーツ活動でも文化活動でも講習会にお金を払う文化を作るヒ必要がある。現状でも学習塾には年間100万を普通に払っているのだから。
小林:怪我等の対応として教育委員会で保険加入の手続きをしてもらうことは必要だが、その費用は別として無償でも指導に行きたいという学生はいる。
泉大津市教育委員会:指導報酬と保険の予算計上は厳しい。
朝倉:文科省が予算を計上をするのが基本では。文化部は、学校の施設を利用するしかないので、部員50人規模で年間350万円かかっている。民間では運営は難しい。

神谷:教育の部分についての指導者への取組について。
中村:教育についての理解は外部指導者だけの問題ではない気がする。
朝倉:外部指導者も基本的な学校教育についての理解はあると思う。
小林:授業セミナーを通して学校教育への理解は深めている。

神谷:学生の部活指導者の派遣は、目の届く範囲はどれくらいか。38名で対応としては適正人数か。
小林;今の人数で丁度うまく回っている。あとプラス10名はいける

神谷;学生を学校に送って、そのマッチングがうまく噛み合わないことはあるか。
小林:基本的に教育委員会と学校が採用なので、ミスマッチはない。顔で繋がっているので本音で情報交換ができている。基本的に必要な学生を要望してくれる。
神谷:実は人と人の繋がりがベースになってマッチングがうまくいっているケースが多い現状があるように感じる。
小林:今後、大阪体育大における部活指導者育成の講習の27コンテンツを公開する予定。各自治体の教育委員会とも共有し、将来的には全国展開に広げたい。

神谷:スポーツ、文化活動の部活動の通した横の繋がりを持とうとしているが、実際は取り組みとしては、結果的に地域毎に分断になっている。どう思う。
中村:学校という枠組みを全く無くすという発想も必要では。例えば部活動だけの学校があってもいい。

(フロアから)
大橋;権利負担の問題について。部活動は絶対に子供に必要だからということで、公費負担をそれぞれがするということも考えられる。

長瀬:現場の教員と外部指導員との意識の共有が難しいが。
小林:行政と連携して意識を変えていくしかない。
朝倉:地域に関わりたいという先生は意外と多いのでは。意見交換はできると思う。

森田:人材バンクがあるが、顔が見えない。これを解決する方策はあるのか。
朝倉:人材バンクの拡充は予算を増やすに限る。
小林:システムの中で誰が派遣されてもうまく機能するのが本来だと思う。学生の特性を活かすことがポイントだと思う。
中村:国家資格を視野に資格を考えるしかない。民間の指導者検定という取り組みもある。

<研究集会に参加して>
議論の基本は、合意形成を念頭に知恵を集めるところにあると考えています。この研究集会の議論が具体的な合意形成を至らないとしても、知識の共有は明らかに前進に繋ると感じました。

より良い状況を導くには、知ることをベースに動くことが重要で、閉塞したなかでの判断は一部の幸福感を増幅するだけの役割でしかないと理解しているのですが、その意味で、今回の研究集会は良質な学びの場になったことに満足しました。

 

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